ゲームアート

つながりあうゲームの世界観

ところにょりさんの生み出す芸術的なゲームたち。

App Storeのゲームには、芸術性が魅力の作品が多くあります。日本のインディーズデベロッパ、ところにょりさんの作るゲームもまた、作り込まれた世界観と強いメッセージ性を持っています。その作品群からは、現実世界に鋭く問いかける、アートに触れたような感覚すら抱きます。

一見すると衝撃的な作品である「ひとほろぼし」では、人を滅ぼす存在となることで、善悪の定義や自らの存在について考えさせられます。

ところにょりさんがこれまでリリースした5本のゲームはいずれも、世界の終末を舞台にした作品です。タイトルや設定は、一見すると残酷で破壊的なように見えます。ですが、それらの作品は、人の生きる意味や大切なものが失われていく際の情感を、ゲームを通して深く考えさせる力を持っています。

興味深いのは、すべての作品が独立した別のゲームでありながら、連続する同じ世界の話であり、世界観に広がりがある点です。その連続性により、次の作品をプレイすることで前作の背景がより鮮明になる、という面白さがあります。

「ひとほろぼし」を別の視点から描いた「ひとたがやし」では、人が機械によって栽培されている光景が描かれます。ゲームを進めることで、この世界に何がおきたのか、プレイヤーは知ることになります。

一連の作品は、「ひとほろぼし」、「ひとたがやし」、「ひとりぼっち惑星」、「からっぽのいえ」、「あめのふるほし」という順番で開発されました。それぞれの作品はお互いに関連性がありますが、明確な説明はなく、プレイする人それぞれの解釈ができるように広く開かれています。

これら5本の作品に共通する世界観を、1つずつ丁寧に堪能していくと、まるで映画を見ているような感覚すら覚えます。この世界観が持つ芸術性は、唯一無二のものといえるでしょう。

機械同士が壊し合う世界を描く「ひとりぼっち惑星」では、プレイヤーは孤独感や無常感などを味わいます。

デベロッパのところにょりさんは、5つの作品がつながっていった過程を以下のように語ります。

「制作当初は世界観を共有した作品を複数作ろうと考えていたわけではありません。ですが、1作目の「ひとほろぼし 」を制作するうちに自分の中で世界観が広がって行きました。『この世界はこの後どうなっていくのだろう』、『このゲームと次のゲームの間はどうなっているのか』と考えるようになり、別の視点から描いた作品を作りたくなりました」

現時点での最新作である「あめのふるほし」では、1作目からつながる世界観の広がりを感じることができます。

強いメッセージ性を感じられる作品たちが生まれた背景には、このような想いがあったといいます。

「昔から『あったものがなくなる』、『あったものがなくなっていく』ということに対して、悲しさや切なさとは別に、ある種の美しさのようなものを感じていました。プレイヤーにもその美しさを感じてほしいという想いで、あのような作品を作っています」

「からっぽのいえ」では、「あったものがなくなっていく」情感が、ロボットの視点から描かれます。

デベロッパの想いを詰め込んで、世に出ていく作品たち。作り込まれた芸術性と、プレイする人に訴えかけるメッセージ性を持ったところにょりさんの作品は、気軽に楽しめるゲーム性に、新しい深みをもたらしました。